10月某日、鴨川シーワールドへ遊びに行ってきた。
ちなみに今回は1泊2日の旅行で、1日目はマザー牧場に行っている。
ここ鴨川シーワールドは、全国でも2ヵ所しかない “シャチが見られる水族館” だ。
(もう1ヵ所は私の地元・愛知の名古屋港水族館。名古屋の誇りである)
ゲートをくぐると向こうは海。人工の水槽と本物の海が同時に見られる、贅沢な立地だ。
ウミガメの水槽は、まるで海沿いの高級な温泉でみられるインフィニティ風呂のようだった。
鴨川シーワールドはショー特化型のパーク。園内には4つものスタジアムがあり、毎時間どこかで何かしらのショーが行われている。
ショーのない僅かな空き時間には動物たちのフィーディングタイムが開催されるので、すべてを見るのはたいへん難しい。それほどに充実したスケジュールで営業しているのが鴨シーだ。
まずはイルカショーを鑑賞。
開始5分前になっていたので、スタジアムはほぼ満席。最上階の立ち見席になったが、それでも十分な臨場感があり、躍動するイルカの美しさを存分に楽しめた。
気が付いたこととして、ショーの間はトークが一切ない。
ショー開始のアナウンス以降は、ただひたすら技を出しまくる。ジャンプ、回転、鳴き声、トレーナーさんとのコンビネーション技……時間いっぱいパフォーマンスを詰め込んで、あとは終了の挨拶のみ。
「イルカたちの名前を紹介します」とか、「イルカの特徴を説明します」とか、そんなトークはない。ストイックで潔い内容だった。
イルカショーが終わった直後、別のスタジアムでシャチのショーが始まる。
今までイルカショーを見ていた人たちが一斉に移動し始めた。しかしその頃には、シャチのスタジアムはとっくに満席。なにしろこれが鴨川シーワールドの目玉コンテンツなので、特に早く席が埋まってしまう。
私たちはこの回を諦め、午後に席取りをガチることにした。
次に向かったのはアシカのスタジアム。
アシカのパフォーマンスが行われるスタジアムは、周りをいくつもの展示場で囲まれており、セイウチやアザラシ、イルカが飼育されている。
(※先程のイルカスタジアムはあくまでショーのスペースであり、展示水槽ではない)
そしてこの展示場は地下まで続いており、地階では前述の動物たちが水槽内を泳ぐ姿を見ることができる。
地下展示室では、オウサマペンギンとジェンツーペンギンが見られる。
ジェンツーとは “異教徒” という意味で、頭にターバンを巻いたような模様から名付けられたそう。
アザラシ界最小のワモンアザラシと、最大のアゴヒゲアザラシ。2種が同じ水槽で過ごしており、体格差の比較が分かりやすい。
この日のアゴヒゲアザラシは、頭を下に向けて逆さまになっている時間が多く、キクラゲみたいな後脚だけを水面に出していた。
エトピリカが見られるのは、JAZAに登録されている国内の水族館の中では鴨シーを含めて4ヵ所のみだ。
アイヌ語で “美しいくちばし” という意味で、その名のとおりオレンジ色の鮮やかなくちばしを持つ。
展示室は北アメリカ・アラスカ沿岸をイメージした造りで、水中を覗くとエトピリカの泳ぐ脚の動きが見られる。
公式サイトの写真だと、おじいちゃんの眉毛みたいな顔の飾り羽が特徴的だが、これは夏の状態。今回見たエトピリカは冬羽になっており、眉毛はなかった。
ちなみに、昨年7月に撮った写真はこちら。
続いてはカマイルカ。
今年8月に生まれた男の子・ラインくんが元気に泳いでいた。
一緒に泳いでいるのが母のローラだろうか。元気に育ってほしい。
別の水槽には、ラインくんファミリー以外のカマイルカも泳いでいた。
のんびり泳ぐもの、スピードを出して動くもの、観察していると個性豊かだ。いつまでも見飽きない。この水槽だけで3時間くらい居られそう。
混同しがちなアザラシとアシカを一度に比較して見られる水槽もあった。一緒に泳ぐ姿は意外とレアなのかもしれない。
そうこうしているうちにアシカショーの時間。
アシカはイルカに比べて体が小さく、派手なジャンプもできない。そして表情が面白いので、総じてコミカル系の内容になりがち。
鴨シーのショーは “スマイル一家のハッピーホリデー” と題して、家族のキャラ付けをされた4頭のアシカが休日を楽しく過ごすストーリーだ。
アシカたちの披露する技は、技というより一発芸に近い。でもとてもかわいくて癒される。
人の指示を理解できる賢さと、運動神経・バランス感覚の良さ、アシカのポテンシャルが存分に発揮されたステージだった。
アシカショーの後、セイウチのフィーディングタイムが始まった。
正直、めちゃくちゃ驚いた。なんとセイウチも当たり前のように技を披露できるのだ。
セイウチの知能の高さや器用さに驚いたのはもちろん、この巨体相手に技を仕込もうとする、その発想自体にも驚いた。パフォーマンスに貪欲すぎるぞ、鴨シー。
次のベルーガのパフォーマンスまで少し時間があったので、展示施設の『トロピカルアイランド』と『エコアクアローム』を見て回ることに。
残念ながら、この日の『トロピカルアイランド』は工事中で、大水槽とクマノミの水槽、その他一部の展示以外は立ち入り禁止になっていた。
とてもとても残念。でも、大水槽が見られて良かった。
大水槽の向かい側にあるのは、クマノミを中心とした展示。定番のカクレクマノミだけでなく、数種類のクマノミが飼育されている。
鴨シーはショースタジアムの数が多い代わりに、魚の水槽は決して多くない。が、限られた中で見せたいポイントが厳選されている。クマノミ系に特化させたこの展示にも、そんなこだわりを感じた。
『エコアクアローム』では、房総の川・海に棲む生き物が紹介されていた。このご当地感が、水族館巡りの楽しいところ。地元の自然の豊かさを広め守ることも、各水族館の大きな役割のひとつだ。
展示場内の説明として、公式サイトには、
「水の一生」をテーマとして、川の源流から海へと続く水の流れや波の動きを再現し、それぞれの場所に生活する生きものたちを自然な姿で展示しています。
上記のように説明されている。
水槽内だけでなく展示室内全体が本物の自然のように作り込まれており、まるで森の中で生き物を観察しているかのような気分になれる。
エコアクアロームの雰囲気から一転、『クラゲライフ』のエリアはまるで宇宙船のように人工的かつ幻想的な雰囲気。
クラゲを引き立てるように、室内は薄暗く、水槽内が効果的にライトアップされている。
今回は9月に採集されたばかりというタコクラゲの展示が公式から推されていたので、見ることができてよかった。
あと、クラゲライフの向かいの水槽にマンボウがいる。
続いてベルーガの水槽。
今回見た5頭のベルーガのうち、2頭が子どものベルーガだった。子どもの体は灰色で、大人になるにつれて白く変わるのだそう。たしかに少しグレーがかった体色だった。
まもなくベルーガのパフォーマンスが始まった。他のショーと違い、ベルーガは水中の様子を鑑賞する。
水槽前にいる進行役のお姉さんのマイクはバックヤードと繋がっており、トレーナーさんが水槽の上から指示を出しているようだった。
ベルーガは全身を見せるようにくるくる回転しながらガラスの前を泳いだり、合図に合わせて首を振ったりしてみせる。また、お姉さんの言葉の響きを聞き分けるだけでなく、真似して鳴き声を出すという能力も見せてくれた。
じつは名古屋港水族館でも昔ベルーガの訓練の様子を見たことがあるが、あくまで「公開トレーニング」の内容だった。
鴨シーは既にひとつのショーとして完成させている。すごいことだ……。
ちなみに、名古屋港ではシャチのショーもあるが、こちらもトレーニング止まり。
だから鴨シーのシャチショーは、あまりにもすごすぎて初見の時には頭を殴られたような感覚だった。
ここまでシャチの能力を生かし、技をいくつも覚えさせ、信頼関係の上にコミュニケーションを取り、観客をずぶ濡れにさせるなんて。
鴨シーのシャチパフォーマンスは唯一無二だ。シャチの美しいツヤツヤの巨体から繰り出される、もはや波レベルのものすごい水飛沫をじゃぶじゃぶ浴びる経験は、絶対にここでしかできない。
ショー開始直後、あまりの水量に観客席は早くも悲鳴とどよめきに包まれた。
イルカのような軽やかさとは違う、ダイナミックで豪快な動きは見ごたえ抜群。そしてジャンプするたびにこれでもかと水飛沫が上がる。シャチのかわいさと、大量の水をかけられることへの恐れが共存する、癒しと恐怖のパフォーマンスだ。
ショーの写真、そんなものはない。私のカメラは防水仕様ではないので、あんな量の海水をかけられたら一発で終わる。
が、ショーが終わるとしばらく公開トレーニング状態になるので、ここで数枚写真に収めることができた。
シャチもすごいけどトレーナーさんの身体能力もすごすぎる。そして、シャチたちをここまで育て上げた手腕がマジですごい。
ちなみに、私たちは旅館の朝食を食べ過ぎたこともあって、昼食をまともに食べられなかった。シャチショーの待ち時間に売店でチュロスとポテトを買い込み、ショーの後でアイスを食べて終了。
鴨シーには素敵なレストランやフードコートもあるので、そっちも利用したかった……が、タイムスケジュール管理に忙しすぎて、そんな余裕はなかった。昼食時間の確保を次回までの課題としたい。
とにかく最初から最後までめいっぱい楽しんで、大満足の1日だった。
(シャチのびしょ濡れプログラム、真冬でもやるのだろうか……?)
おわり。